2020年10月16日金曜日

別れの予感







身体は「魂の箱 」だと誰かが書いていた


101年モノの祖母の箱のお役目は
そろそろ終わりが近づいてきています



8月の入院から回復をしたのものの
箱のほころびは元に戻らず



今日が最後になるかもしれないな


そう思いながら祖母の部屋に入る



もう車椅子に座れずベットに横たわっているので
足元のハイヒールに目線が送られない
ハイヒールの高さもチェックもされない



しかし、私が彼女の手を握ると
私の爪先の色を見ようと
小さな黒い真子がクリクリ動く



桜色に染めた指先の色に
ご満足すると
私の爪を祖母は指の腹でなぞる



この人は本当に美しいモノに目がなくって
美を求める心に容赦がない 




帰り道 高速バスの中から見る
夕暮れの田畑の風景は
全てを包み込むような優しい色で



何だか無性に寂しくなる
悲しくはないのだけど
泣けてきたりする




9月中頃から食事が取れない祖母に
美味しいおやつを毎週どんどん運んでいたら
先週から急変した



何と魂が回復している
箱(身体)のは変わらずほころんでるけど



食の喜びを思い出したようで
今週は車椅子にも座り
オヤツの到着(私の到着)を待っていた




思わず駆け寄ると
「危にゃーーー(危ない)」



ルブタンの12㎝ヒールに
久しぶり一癖ついてご満足頂けた様子
(ちなみに8㎝だと言わない)



その生命力って
美を求める心が作っているのだろうなと思う




9Neuve 貴子


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