また坂の上の病院へ続く道を、歩いている
すこぶるご機嫌が悪い父が
「足音がうるさい」と言うので
ななな何ですって、と片眉が上がりそうになる
それは母が履くバレーシューズの足音
母は肩をすくめながら
そろりそろりと猫のように歩きだし
私の足元を指差す
「私はつま先から着地してるから音はしな・・・い」
と小声で言いかけてグッと息を飲んだ
コツコツとハッキリ音が足元からする
それは踵にも体重が乗っている状態で着地してる証拠
ムムムと口ごもり
ハイヒールの足さばきを練習していたら
ハイヒールの足さばきを練習していたら
父の心拍数がどんどん上がり出し
「足音が、頭に響くからやめて」苦しげに呟く
ぐうの音も出ず、変な汗が流れる
とにかく、今は足音がする靴はやめよう
家族って時に厄介で、でも愛しい
今日は、病室の前でハイヒールからスニーカーに
履き替える怪訝な姿を看護師さんから見られていた
履き替える怪訝な姿を看護師さんから見られていた
事情を話すと足元をふと見てニコリ
「来た時の姿がカッコイイので
ナースーステーションで噂してました」
また妙な汗が流れる
身体の軸を探りながら歩く姿を見られているのだ
身体の軸を探りながら歩く姿を見られているのだ
とにかく、ハイヒールは誰かを刺激しているようだ
9Neuve 貴子